日本において、アンチマネーロンダリング(AML)対応厳格化の声が高まってきています。マネーロンダリングが普通に行われ、その渦中に巻き込まれることで、企業や個人としての信頼・信用を失う可能性が高くなります。現在のようにSNSやネットのような情報スピードが著しく早い時代には、悪い噂が流布されるリスクは非常に高いのが現状です。

そこで、アンチマネーロンダリング(AML)についてここでは取り上げて見ていくことにしましょう。

マネーロンダリングとは?

そもそもマネーロンダリングについて言葉は知っているけど、あまりよくわからないという方のために、マネーロンダリングについてお伝えしておきます。マネーロンダリングとは、端的には「資金洗浄」のことを差します。犯罪・麻薬取引などで不正に獲得したお金を、他人名義の口座や架空口座を使って転々と経由させ、出所をわかりにくくすることにより正当な行為として得たお金と思わせるものです。つまり、口座を移動する間に不正なお金がだんだんと綺麗になるという意味で「マネーロンダリング」と名付けられています。

金融庁の公式ホームページでは、

「マネーロンダリングとは、違法な起源を偽装する目的で犯罪収益を仮装・隠匿することであり、例えば、麻薬譲渡人が取得した譲渡代金をあたかも正当な商品を譲渡した代金であるかのように装うため売買契約書を作成する行為、あるいは借入金、預り金等を装ってその旨の書類を作成し、あたかも正当な取引により得た資金であるかのように偽装する行為がその典型とされています」と、マネーロンダリングを定義しています。

日本だけでなく、国際社会としてもマネーロンダリングの防止や摘発を行うため、マネーロンダリング対策強化を行っています。たとえば、マネーロンダリング対策の国際組織となる「FATF(金融活動作業部会)」は世界各国に呼びかけ、各国での取り締まり強化を求めています。金融活動作業部会とは、1989年にアルシュ・サミット経済宣言に基づき設置された国際的マネーロンダリング対策推進を目的とする国際的な枠組みです。このメンバーにはOECD加盟国中心に34か国の地域及び2つの国際機関が参加しています。テロ資金供与対策も含め、各国が取るべき措置を「FATF勧告(Recommendations)」としています。

マネーロンダリングが疑われる取引は年々増加しており、2020年にはなんと40万件近い取引でマネーロンダリングの疑いが持たれています。このようにマネーロンダリングが普通に行われることによって、犯罪で得られた収益がさらなる犯罪活動や犯罪組織の維持・強化に利用され、犯罪やテロリズム増加が助長されてしまいます。これにより、警察の検挙が逃れられてしまうなど、国民生活の安全性が確保できなくなる危険性があるわけです。金融機関は被害に巻き込まれる危険性が非常に高く、しっかりとしたマネーロンダリング対策を求められます。

マネーロンダリングの現実

マネーロンダリングは仕組みが巧妙でかつ複雑です。

金融機関における対策

金融機関では、特にマネーロンダリング対策・テロへの資金供与対策が課題です。アンチマネーロンダリングに向けた「スクリーニングシステム」の導入に莫大なコストもかかってくることもあり、対策がしっかり取れていないところも多くあります。現在、金融機関向けのアンチマネーロンダリング対策として取られているものや「モニタリング機能」、「フィルタリング機能」といったものがあります。

モニタリング機能は、発生した取引を口座ごとにモニタリングし、通常と大きく異なる取引を検知。これにはAIの学習機能を用いて取引を学習させることが可能です。これにより、金融機関ごとで異なるモデルを自動で生成でき、常に最新化を図ります。また、フィルタリング機能においては、国連や当局が保有・開示しているブラックリストをベースに、資金決済のスクリーニングチェックを実行可能となります。

他にも金融機関では、申込書などに記入欄のない事項について詳しく伺うことがあったり、確証となる資料提出をお願いすることがあったり、取引制限やお断りをすることがあったり、外国籍の場合には在留資格や在留期間のわかる書面の提示をお願することがあるなど、お客様に提示したりしながら対策を行っています。

通常と異質な口座の動向

通常、企業や一般人が振込先を頻繁に変更することはあまりありません。しかし異なる複数の相手に対して送金申し込みがあったり、不明な海外送金があったり、口座が乗っ取られた可能性があると検知された場合、注意が必要となります。そのような観点から、悪質なマネーロンダリング対策を強化するために、日本では2007年1月4日から本人確認法(金融機関等による顧客の本人確認及び預金口座等の不正利用の防止に関する法律)が一部改正され、現金によるATMでの振込み限度額は10万円に引き下げられています。10万円を超える現金で振込みを行う場合には、窓口で本人確認書類の提示が義務付けられるようになるなど対策は行われています。本人確認法項目が追加されて、2008年3月から「犯罪による収益の移転防止に関する法律」に置き変わりました。「振り込め詐欺」防止対策のひとつとして認知されています。

現金での資産取得

現金取引の場合、資金の出所がわからなくなってしまうことが多く、マネーロンダリングが行いやすいと言われています。実態がわかりにくい事業の会社や実質的な支配者がわかりにくい企業の口座開設も、本人確認の徹底をするなどして、不審な取引を予防する対策が必要です。

AMLに向けた金融庁の対応

銀行口座などを経由する手段以外にも、資産価値が高く持ち運びやすい宝石や貴金属といったものもマネーロンダリングに非常に利用されやすくなっています。クレジットカードも換金性が高く悪用されやすいものとして認識されています。

マネーロンダリングおよびテロ資金対策については、国際組織であるFATF(金融活動作業部会)が、2021年8月に公表した対日審査報告書において、日本のマネーロンダリング対策を「不十分」と指摘しました。従業員やシステム投資資金が限りのある地域金融機関(地銀等)における対策は問題と言われています。

マネーロンダリング・テロへの資金供与防止に向け、金融庁は経済産業省との連携を強化することを2021年11月に発表しています。たとえば、宝石や貴金属、クレジットカード事業者を所管する経産省との間で知見や情報を共有することにより、マネーロンダリング対策の実効性を強化するのが狙いとなっています。この背景として、国際審査においては日本における対策不足が指摘されていることなどが影響、省庁の垣根を越えた監督・監督体制となります。

まとめ

アンチマネーロンダリングについては、マネーロンダリングについての正しい理解とマネーロンダリング対策に自分が行えることを知っておくことが重要です。マネーロンダリング対策をしっかり行うことが、不正や犯罪に巻き込まれないためには大事だと肝に銘じておきましょう。